大阪の堺周辺に一泊二日で遊びに行くことが決まったのは、
それほど唐突な話ではありませんでした。

一ヶ月前にはちゃんと手帳に書き込んでいたほど、
準備期間は充分あったというのに。

それにも関わらず、
もう明日の朝7時には電車に乗って
出発しなければならないその前日の夜に、
『司馬遼太郎の街道をゆく4堺・紀州街道』
で、慌てて予習をし始めるという在り様ですから、
我ながら情けなくなってきます。

『司馬遼太郎の街道をゆく』とは、
歴史小説家として著名な司馬遼太郎が
昭和46年から平成8年に亡くなるまで連載され続けていた
全43巻のいわば文学旅行記です。

行く先々でその土地の歴史の話であったり、
司馬遼がその土地の文化や風土に実際に触れて
感じたり考えたりしたことをドキュメンタリー形式で書き綴られた、
司馬遼ファンにはたまらない内容の本であります。

もう何が情けないって、
司馬遼好きな私は半年ほど前に
その『街道ゆくシリーズ全43巻』を大人買いし、
よ~し。
これから旅行に行く前には、
事前に旅先に見合った部分を
必ず読了してから旅行に行くようにしようと、
そう思っておりました。

いうなれば、
『街道をゆく』の街道を松原がゆく。
みたいな。

発想はカッコええと思うんですが、
出来てへん自分がめちゃカッコ悪いです。

しかも、朝目が覚めたら
電気スタンドも点けっ放しで
本の3分の1ほど進んだところに手を挟んで
ヨダレまで垂らしてたっちゅうんですから、
もう目も当てられないとはこのことです。

そもそもの大阪行きなんですが、
『植木鋏研究会』なんていう、
おそらく世界に二つとない恐ろしくマニアックな集団の
新年会(2月なのに)に参加するためです。

その名の通り、はさみを研究する会であります。
しかも植木鋏限定ですから、
髪切り鋏(ごめんね名前知らんのよ)を研究する
理容師や美容師の方は入会できませんし、

たとえ裁縫鋏研究の第一人者であったとしても
残念ながら入会することは出来ません。

植木鋏を愛して止まない人だけの会。

『そんな奴おらんやろー』とお思いでしょうが
これが世の中はやっぱり不思議。

いるんですよね。現在、会員15名。

神奈川から何度も京都へ訪れて、
京鋏のルーツを調べている方がいらっしゃったり、

全国の名人といわれる方々の打った
何万もする鋏を何十丁とコレクターしている方とか、

鋏の話をさせたら止まらなくなる、
場合によってはちょっとメンドくさい方とか。

そういった俗に言う変人(おっと失言)な人たちの集まりなんです。

お恥ずかしい話、
私にはそんな鋏ばなしも知識も皆目ないんですが、
もはや腐れ縁になりつつある友人たちが
たくさん入会しているってこともあって、
『植木鋏をこよなく愛する者を愛する者』ということで
入会させてもらったわけであります。

とまあ、そんなこんなで、
未だ読み終えてない『街道をゆく』を片手に、切符を片手に。
慣れない電車を乗り継ぎながら、
JR南海線の浅香山駅で下車。

改札を出ますと、私で全員勢揃いの様です。
神奈川からはるばる来られた方。
熊本から飛行機に乗ってやって来られた方。
奈良からの方。
久しぶりの顔ぶれ。
初めてお会いする人。

今回の新年会は総勢10名。

一通りご挨拶させていただくうちに、
ポポポポ~ン♪となんだかテンションが上がってきました。

さらに、去年の九州旅行でも
思いっきりお世話になった『熊本の武蔵さん』が
「実はオレ、昨日に大阪入りしてさ~。
司馬遼太郎記念館行って来たんだよね~。
コレかっちゃんにお土産」なんて言って、
こんなブックカバーのプレゼントをいただいちゃいました。

武蔵さんとの熊本珍道中のブログ記事はこちら。
http://ameblo.jp/matsu-niwa/day-20110430.html 

なんと。
私が司馬遼好きなことを憶えてて下さってたなんて。
ちょー感動です。
私のテンションゲージが、そりゃあもうミョ~ンと上がります。

さらにまだあるんです。

私が武蔵さんに
「えー!?武蔵さん、僕も司馬遼記念館に行きたかったのに、
抜け駆けしたな!!」などと、嫉妬混じりの文句を言っていると、

この会のリーダーである大阪の『さとちゃん』が
「あー。この本、僕が昨日買った本と一緒ですわー」
と、私が持っていた
『街道をゆく4 堺・紀州街道』を見て言ってきました。

どうやら昨日、
熊本の武蔵さんの案内役として
司馬遼記念館に同行したらしいのですが、
それまで司馬遼のことなんて
全く知らなかったし、興味もなかったさとちゃんでしたが、
記念館を見て痛く感動したらしく、
たくさん陳列している文庫本のなかの一冊を
思わず買ってしまったのが、
なんと私が今手に持っているこの街道をゆく4だというのです。

『堺だけに』とはいえ、まあまあ奇遇でしょ。

「マジっスかぁ!!」
「マジっス!マジっス!!」

「ホンマっスかぁ!?」
「ホンマっス!ホンマっス!!」

などと、テンションだだ上がりの二人を含む一味が向かうのは、
浅香山駅から徒歩3分の
堺の鋏鍛冶、佐助さんの鍛冶場です。

随分前置きが長くなりましたが。

植木鋏研究会の2012年の新年会はここ佐助さんの鍛冶場から始まります。

次回につづきます。

植木鋏研究会in大阪②