ホテルくに荘 露天風呂。
女湯の石組を始めます。

前回の記事
ホテルくに荘 露天風呂① 遂に始動。

一発目に据えていく石はやはり、吐水口となるメインの瀧組みからです。

石を組んでいくのに設計図っていうのはありません。
自然石というのは、同じ形は二つとありません。

全て形が違います。

だから正確には、設計図が無いんじゃなくて、書けないんです。
なので設計者は平面図でこんな感じで描く。

これはまだちゃんと描けてる方。

源氏の湯のときなんて

石が○ですから。
大体φ500mm内外の石をこう、並べる…的な。
超適当です。

もちろん、ほかの建物や設備や電気などに関しては、きちんと精密に描かれていますよ。
だけど、造園に関しては、ほとんどの設計はこんな風に曖昧で現場任せ。

要するに、請け負った造園屋に拠るところが大きいのです。
「その辺はプロの腕で、かっちょいいものを宜しくです(`・ω・´)ゞ」ってね。

なもんで、好きなことやっちゃいます。
設計とか、デザインするのが大好きなタチなので♪

〝好きなこと〟といいましても、もちろん当然のことですが、ルールの範囲内で、施主様のコンセプトも理解し、周辺の環境も配慮した上でです。

露天風呂のお仕事の話をいただいた時点から、くだらない風呂をつくるつもりは毛頭ありません。
設計図は私の頭の中に、ちゃんと鮮明に描かれています。

しかし石なんて、同じ形は二つとないのだから、なるようにしかならないんじゃないの?
なんて、思われている方もいらっしゃるでしょうが、それは正解のようで正解ではない。

その個性ある石どもを自在に操り、自分のイメージにどれだけ近づけるか。
それが庭師力です。

書きだすと、なんだか変に興奮してきて、恥ずかしいほどに御託を並べてしまいました。

ガンガン石を据えていきます。
こいつが親石です。

親に向かって〝こいつ〟と偉そうに言いましたが。
親石と言っても、まぁ僕がこの度、晴れて親石にしてやったわけですから、僕の方がこいつの親となります。
だから、僕から見れば、正確には子石ですな。

と、どうでもいい話を挟みつつ。

ひとつひとつ石の面を見ながら、それぞれの役割に配石していきまして。

段々露天風呂の面影が見えてきました。

さらに間に石を組んでいきまして、これでおおかたの形が出来上がりました。

露天風呂の底には鉄平石を張ります。

イメージパースはこう。

欲を言えば、瀧組をあと石ひとつ分、奥行きを出したかったです。
ですが、敷地に制限がありますので、そこは仕方がないところ。

それ以外はほぼほぼイメージ通り。
満足の出来です。

内湯となる浴槽からの眺め。

露天風呂の佇まい。 いいよ。

今は石の材料やブロックが散らかっている右側の空いている空間に、これから庭をつくっていきます。

実のところ、ベースにした石組があります。
その石組とは福井県福井市にあります一乗谷朝倉氏の屋敷跡に今も残る石組。

以前、ブログにも書きました、一目惚れしたあの石組。
どうしてもこの目で見たくなり、その日の内に車を走らせたあの石組。

この石組をイメージしてパースを描きました。

庭師から庭師へ 一乗谷朝倉氏遺跡の石組

種明かしすると、この露天風呂を想定してのひとっ走りでした。

自分自身では、ひとっ走りした値打ちがあったと確信しています。
室町時代の名もなき芸術家の作品を取り込み、それを自分の中で変換して、今までになかった新しいものをいつかはつくってみたいなぁ。
なんて思っています。

次回、男湯の石組を組んでいきます。

ホテル京都くに荘 露天風呂③につづく